玄能石(T字形 各約6cm) |
『長野県地学図鑑』(1980)138頁 玄能石(T字形 約10cm弱) |
『長野県立歴史館たより 2019 春号 Vol.98』表紙 |
玄能石(げんのういし・げんのうせき)の名前の由来かもしれない、T字形の玄能石です。
(※越戸の産地は採集禁止、立入禁止になっています。)
『長野県地学図鑑』にあるようなT字の下棒が長いタイプはあまり見ませんが、短いタイプは見かけます。
両錐形のものだけを見ても金槌・玄翁は連想しにくいですが、いくつかある中にT字形のものが一つでもあれば、ハンマーが連想されて、両錐形のものもハンマーの頭部に見立てることができるかもしれません。
明治28年に武石(たけし)小学校の保科百助(ほしな ひゃくすけ 1868-1911)のところに持ち込まれた玄能石にも、T字形のものが含まれていたのかも。
海外ではどんなものに見立てているか、ウェブを検索してみると、blade(刃)、cross、star-shaped、chicken foot(鶏の足、紅葉)、rose rock、pine cone(松かさ)、パイナップル、サブマリン、molekryds(モグラのcross?)、Gersternkorner(大麦の粒)等がありました。ハンマーに見立てる例は日本以外では見つかりませんでした。石製のハンマーの頭部を hammer stone、hammerhead stone と呼ぶことはあるようです。
一番下の写真は『長野県立歴史館たより 2019 春号 Vol.98』表紙より、佐久市下茂内(しももうち)遺跡の槍先形尖頭器(石槍)(無斑晶質安山岩製)です。両錐の玄能石は、このような石槍・尖頭器に似ていますが、「(あまり似ているようには見えない)玄翁に似ているから玄能石と呼ばれた」という話が広く受け入れられています。名前から由来が作られる作用は、人間にとって、不可避な錯覚のようなものなのかも。
長野県立歴史館 2019年巡回展「長野県の考古学-時代を映す匠の技」
平成31年3月16日(土)~6月23日(日)
https://www.npmh.net/