2019年11月17日日曜日

千曲川堤防調査の報告資料

地層想定縦断図(上田橋付近)
上田橋付近の地層想定縦断図(第2回千曲川堤防調査委員会 資料-2 33頁 PDF43頁より)

千曲川堤防調査委員会の資料が公開されていました。 上田橋付近は河道の蛇行が逆転していて、左岸の比較的厚く堆積していた砂礫が削られているとのこと。(資料-2 28頁 PDF38頁)
崩れた堤防の水面近くに見えていた大きな石は第一期改修時(大正~昭和初め)の空石張(からいしばり)護岸の石、その下の砂層は扇状地堆積層(完新世 砂質土・礫質土 A(fa)s1 A(fa)g1) でしょうか。(資料-2 33~34頁 PDF43~44頁)
今、欠損箇所の上流で、以前の空石張護岸と木工沈床の露出が見られるそうです。

第2回 千曲川堤防調査委員会を開催します。~堤防決壊の原因究明に向けて~
https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo05_hh_000089.html

第2回千曲川堤防調査委員会(R1.11.13) 配付資料一式
http://www.hrr.mlit.go.jp/river/chikumagawateibouchousa/index.htm

関心が高い時期に、一般向けに資料の解説や基礎知識等の勉強会をどこかでやって頂けると嬉しいのですが… (ボーリング調査の資料や標本もできるなら見てみたいです。)

2019年11月16日土曜日

黒い藻類?

黒い藻類の滝?
黒い藻類の滝?

紅藻類?
紅藻類?

紅藻類?
紅藻類?

今月に入って山や川へ出かけるお誘いを頂いたのですが、まだそういう気持ちになれず。近くの露頭は一度様子だけ見ました。崩れている所と変化の少ない所と半々くらい。

川沿いの崖で、水がしみ出て、ヌルヌルした藻類?が黒い滝のようになっている所があります。以前、採取して水中で揺らして洗ってみたら、繊維状の集まりのようでした。紅藻類(黒髭苔、黒髭藻、糸状藻)でしょうか。

外来種の藻類(ミズワタクチビルケイソウなど)の話題も聞きます。見た目が特徴的でないと、繁茂するまで、気にされることは無さそう。

東御市では学生と合同で河川生物調査をしているそうで、継続するのはすごいと思います。(人が入れ替わるので、記録以外の変化は気付かれにくいかもしれませんが)

高校生との合同河川生物調査
https://www.city.tomi.nagano.jp/category/2511/130226.html

川底に生育する珪藻
http://diatomology.org/topics/2013-2/index.shtml

付着藻類の異常増殖
https://www.kahaku.go.jp/research/db/botany/habs/hab2h.html

2019年11月11日月曜日

別所層のヤナギ科・ブナ科・クスノキ科

アカガシの仲間(アケボノシラカシ?)
アカガシの仲間?(部分 上田創造館)

ヤナギの葉脈と鋸歯
ヤナギの葉脈と鋸歯

別所化石植物群(信濃中部地質誌)
別所化石植物群(信濃中部地質誌)

ムカシランダイスギ・セコイア・メタセコイアの他に、別所層のヤナギ(Salix)も気になっているものの一つで、『信濃中部地質誌』(上田市・青木村)と坂城町の資料にはありますが、豊科町中谷の資料にはありません。標本が少ないためか、郷土資料ではアバウトすぎる判定も見かけます。(細長い葉は「ヤナギの仲間」、細長い貝は「マテガイの仲間」というような。)
ブナ科・クスノキ科が多く、ヤナギ科は少ない気がするのですが、どうなのでしょう…

ヤナギ属の葉
http://syokubutukensaku.o.oo7.jp/topic13.html

別所層の植物化石の一覧を探してみました。

本間不二男(1897-1962)「信濃中部第三紀層の分類(一)」『地球 第9巻 第4号』(昭和3.4 1928)
「(B)第二表 (小平理学士鑑定)」
http://hdl.handle.net/2433/183423


今野圓藏(1898-1977)「信濃中部に産する新生代化石植物群」(本間不二男『信濃中部地質誌』(昭和6 1931) 「第六表 別所化石植物群」より (番号 種名 属名)

List of Plants of the Miocene "BESSIO FLORA."
1. Sequoia Langsdorfi Hr. セコイア
2. S. Nordenskioldi Hr. セコイア
3. Pinus sp. マツ
4. Bambusium sp. タケ
5. Salix boliosa Newb. ヤナギ
6. S. membranaceous Newb. ヤナギ(紙質)
7. S. sp. ヤナギ(洋紙質)
8. Alnus sp. (ハンノキ属)
9. Quercus progilva Kryst.
10. Q. cf. glauca Bl. 革質葉カシ (アラカシ)
11. Q. cf. salicina Bl. 革質葉カシ (ウラジロガシ)
12. Q. cf. stenophylla Makino 革質葉カシ (ヤナギウラジロガシ)
13. Q. cf. consimilis Newb. 紙質葉カシ
14. Q. sp. (acuminate, densinerves) 紙質葉カシ
15. Celtis sp. エノキ
16. Actinodaphane sp. アヲカゴノキ
17. Cinnamomum sp. クスノキ
18. Laurus sp. ゲツケイジユ
19. Machilus sp. タブノキ
20. Persea speciosa Hr. (ワニナシ属)
21. Ilex sp. モチノキ
22. Sapindus falcifolius A. Br, (ムクロジ属)
23. Berchemia sp. クマヤナギ
24. Rapanaea sp. タイワンタチハナ
25. Cassia ambigna Hr. (マメ科カッシア属)
26. Viburnum sp. ガマズミ


『上田小県誌 自然篇』(1963) 105頁より

(B)別所層の化石
-植物-
1 Sequoia longsdorfi HR
2 Tsuga? sp
3 Sapium? sp


松尾秀邦「長野県坂城町別所層の植物化石(特に別所植物群)」『長野県埴科郡坂城町胡桃沢化石群の調査報告』(昭和54.3 1979) より (番号 種名 近似種)

1 Sargassum sp. 近似種はホンダワラ
2 Pinus sp. α 近似種はクロマツ
3 P. sp. β 近似種はダイオウマツ
4 Sequoia sempervirens (D. DON) ENDLICHER セコイア
5 Cunninghamia konishii HAYATA ランダイスギ
6 Cryptomeria japonica D. DON スギ
7 Calocedrus sp. ? 近似種ショウナンボク
8 Chloranthus sp. ? 近似種センリョウ
9 Salix membranaceous 近似種ヤナギ
10 Myrica sp. 近似種ヤマモモ
11 Quercus cfr. glauca 近似種アラカシ (常緑ガシ)
12 Q. cfr. salicina 近似種ツクバネガシ (常緑ガシ) (※近似種ウラジロガシ?)
13 Q. cfr. stenophylla 近似種ウラジロガシ (常緑ガシ)
14 Q. cfr. consimilis 近似種不明
15 Q. sp. 近似種不明
16 Lithocarpus (Pasania) sp. 近似種マテバシイ
17 Celtis sp. 近似種エノキ
18 Ficus sp. 近似種ガジュマル
19 Cinnamomum sp. 近似種クスノキ
20 Machilus japonica SIEB. et Zucc. ホソバタブ
21 Litsea japonica Juss. ハマビワ
22 Actinodaphne sp. 近似種コガノキ
23 Laurus sp. 近似種ゲッケイジュ
24 Pittosporum sp. 近似種トベラ
25 Liquidambar sp. 近似種タイワンフウ
26 Mallotus sp. 近似種アカメガシワ
27 Daphniphyllum sp. 近似種ユズリハ
28 Rhus sp. 近似種ハゼノキ
29 Ilex sp. 近似種モチノキ
30 Sapindus sp. 近似種ムクロジ
31 Berchemia sp. 近似種クマヤナギ
32 Hibiscus sp. 近似種ハマボウ
33 Ternstroemia sp. 近似種モッコク
34 Rapanaea sp. 近似種タイワンタチバナ
35 Osmanthus sp. 近似種モクセイ
36 Nerium sp. ? 近似種キョウチクトウ
37 Viburnum sp. 近似種ガマズミ
38 Bambusium sp. 近似種タケ


川瀬基弘・小池伯一「長野県南安曇郡豊科町中谷に分布する中新統別所累層最上部の大型植物化石 第一報~第三報」(信州新町化石博物館研究報告 第4号(2001) 第5号(2002)  第6号(2003))

「長野県南安曇郡豊科町中谷に分布する中新統別所累層最上部の大型植物化石(第三報)」(2003) 「付録3. 中谷産植物化石の近似現生種及びそれらの特徴」より (No. 学名 近似現生種)

01 Picea miocenica Tanai (ハリモミ P. polita)
02 Pinus miocenica Tanai (アカマツ P. densiflora)
03 Pinus sp. A (クロマツ P. thunbergii)
04 Pinus sp. B (ダイオウマツ P. palustris)
05 Cunninghamia protokonishii Tanai & Onoe (ランダイスギ C. konishii)
06 Metasequoia occidentalis (Newberry) Chaney (メタセコイア M. glyptostroboides)
07 Sequoia langsdorfii (Brongniart) Heer (セコイア S. sempervirens)
08 Sequoiadendron primarium Miki (セコイヤオスギ S. giganteum)
09 Taiwania japonica Tanai and Onoe (タイワンスギ T. cryptomerioides)
10 Calocedrus notoensis (Matsuo) Huzioka (オニヒバ C. decurrens)
11 Comptonia naumanni (Nathorst) Huzioka (C. peregrina)
12 Pterocarya asymmetrosa Konno (サワグルミ P. rhoifolia)
13 Alnus protomaximowiczii Tanai (ミヤマハンノキ A. maximowiczii)
14 Castanopsis miocuspidata Matsuo (ツブラジイ C. cuspidata)
15 Castanopsis sp. 1 (Castanopsis 属 全縁)
16 Castanopsis? sp. 2 (Castanopsis 属 非全縁)
17 Fagus antipofi? (F. grandifolia アメリカブナ)
18 Quercus mandraliscae Gaudin (ホソバシラカシ Q. longinux)
19 Quercus miovariabilis Hu and Chaney (アベマキ Q. variabilis)
20 Quercus nathorstii Kryshtofovich (アラカシ Q. glauca)
21 Quercus praegilva Kryshtofovich (イチイガシ Q. gilva)
22 Quercus yabei Huzioka (シラカシ Q. myrsinaefolia) (※ Cyclobalanopsis yabei ?)
23 Quercus sp. 1 (Q. bambusaefolia)
24 Quercus sp. 2 (ツクバネガシ Q. sessilifolia)
25 Pasania? sp. (マテバシイ属 Pasania)
26 Celtis miobungeana Hu and Chaney (エゾエノキ C. jessoensis)
27 Ulmus subparvifolia Nathorst (アキニレ U. parvifolia)
28 Zelkova ungeri(Ettings.) Kovats (Z. serrata ケヤキ)
29 Actinodaphne nipponica Tanai (バリバリノキ A. longifolia)
30 Actinodaphne oishii Huzioka (カゴノキ A. lancifolia)
31 Cinnamomum miocenum Morita (クスノキ C. camphora)
32 Cinnamomum lanceolatum (Unger) Heer (ヤブニッケイ C. japonicum)
33 Lindera gaudini (Nathorst) Tanai (ヤマコウバシ L. glauca)
34 Lindera paraobtusiloba Hu and Chaney (ダンコウバイ L. obtusiloba)
35 Machilus ugoana Tanai (ホソバタブ M. japonica)
36 Gleditschia miosinensis Hu and Chaney (サイカチ G. japonica)
37 Robinia nipponica Tanai (ハリエンジュ R. pseudo-acacia)
38 Daphniphyllum sp. (ヒメユズリハ D. teijsmannii)
39 Rhus inouei Huzioka (ウルシ R. verniciflua)
40 Rhus miosuccedanea Hu and Chaney (ハゼノキ R. succedanea)
41 Rhus protoambigua Suzuki (ツタウルシ R. ambigua)
42 Acer prototrifidium Tanai (トウカエデ A. trifidium)
43 Ternstroemia maekawai Matsuo (モッコク T. japonica)

関連の以前の記事です。
植物化石の観察
https://kengaku5.hatenablog.com/entry/36009683

2019年11月1日金曜日

別所層のムカシランダイスギ・セコイア・メタセコイア

ムカシランダイスギ?
ムカシランダイスギ?(部分 野倉民俗資料館蔵)

ムカシランダイスギ?
ムカシランダイスギ?(部分 野倉民俗資料館蔵)

瑞浪市化石博物館の特別展・企画展リーフレットに「ムカシランダイスギ」の写真がありました。学名は Cunninghamia protokonishii 和名は他に コウヨウザン属、ランダイスギ属、ヒノキ科、スギ科、等。瑞浪市化石博物館のデータベースでは コウヨウザン でした。(コウヨウザンやメタセコイア等で「全縁」「細かい鋸歯がある」という説明を見ました。現生のコウヨウザンの葉の拡大写真を見ると、ごく細かい鋸歯があるようです。化石での判別は難しいのかも)
特別展・企画展情報 - 過去の特別展・企画展
令和元年度企画展「化石になった木と葉っぱ」
化石になった木と葉っぱリーフレット
https://www.city.mizunami.lg.jp/kankou_bunka/1004960/kaseki_museum/1004637/1004650.html

瑞浪市内からブナ属の珪化木を発見【気候予測に一石】 2019年07月11日
http://tononews.blog.fc2.com/blog-entry-7489.html

瑞浪市化石博物館古生物データベース
(※改修中?)
http://www2.city.mizunami.gifu.jp/mizunami/dbtop.html

瑞浪市化石博物館
https://www.city.mizunami.lg.jp/kankou_bunka/1004960/kaseki_museum/

(※「野外学習地の利用について」に「家族の学習の場であり、化石収集の場ではありません。最近過度に採集する方が多くみられます。何度も採集に立ち入る方には許可を出さない方針です。」とありました。子供連れの何倍も掘ってリピートするようなマニアよけ でしょうか)


コウヨウザン属についての近年の研究です。定義・分類もより詳細になるのかもしれません。

第三紀温暖要素にもとづいた日本列島ー台湾間の植物交流史の解明
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05599/

矢部淳・山川千代美「化石コウヨウザン属の再検討--その古植物地理学的意義について」(日本古生物学会 2015年年会 講演予稿集 34頁)
http://www.palaeo-soc-japan.jp/meetings.html

上記より引用

・C. protokonishii は非常に細かい鋸歯縁をもった短い鎌形の葉が枝に螺旋配列する特徴からランダイスギとの類縁が考えられたが、球果や種子はランダイスギよりも著しく大きく、別種のコウヨウザン C. lanceolata (Lamb.) Hook. により近い。
・本種は葉の下面ないし上下両面に気孔条をもつ。気孔の向きがややランダムで葉軸方向としばしば直行すること、普通細胞の幅がより広いことなどで現生種および既報の化石種と区別できる。
・本種に同定できる標本は少なくとも中新世はじめから後期中新世まで確認できるが、鮮新世以降の本属の標本には、表皮細胞などの特徴が現生種により近いグループが卓越するようになる。


目がテン! 第1443回 2018.09.23
http://www.ntv.co.jp/megaten/oa/20180923.html

関連の以前の記事です。
メタセコイア、ムカシランダイスギ
https://kengaku5.hatenablog.com/entry/35868227
化石の展示
https://kengaku5.hatenablog.com/entry/36279844