2020年2月28日金曜日

微化石の講座

石灰岩
石灰岩(幅約5mm)

3月8日の新潟大学インターネット市民講座「大きな地球と小さな化石」は中止になったようです。(イベントすべてかどうかわかりませんが。もし小規模・分散的に開催するなら、今回のような状況では比較的有利な形態ではないかと。)
https://geo-itoigawa.com/sub/topics2020.html
https://www.city.itoigawa.lg.jp/item/25302.htm

遠くて企画展等にもなかなか行けないですが、今後もイベント企画や情報発信(一部のコンテンツだけでもいいので)をして頂ければ嬉しいです。

上の写真は以前頂いた青海石灰岩の表面で、0.2mm前後の粒々はたぶん何かの化石。


フォッサマグナミュージアムのウェブサイトを見ていたら、石のガイド養成講座の資料(基礎編・実習編)があって、「持続可能な開発(石探し)」という相反関係を含むテーマが興味深く、勉強になりました。ヒスイ拾いの機会も今後さらに減少して行くのでしょうか。よく観察して定量的に評価しないと、体験や調査の範囲を越えて、一部の人による乱獲の繰り返しになることもあり得るわけで。
石のガイド養成講座・試験
https://fmm.geo-itoigawa.com/blog/event080/
石の鑑定サービスの変更について
https://www.city.itoigawa.lg.jp/item/21402.htm
「サービス利用者が平成29年度の1万7千人から平成30年度は2万1千人へと増加しました。」とのことで、一人10個として年間20万個以上の石が採取されている状況。

おもしろ石コンテストの記事がありました。
いとしん だより No.62
https://itoigawa-shinkumi.co.jp/suishin/itoshindayori.html
おもしろ石コンテスト2019
https://www.city.itoigawa.lg.jp/item/23279.htm


数十人程度の小規模なイベント(観察会・勉強会等)の場合、どうするか(意見調整等も)悩ましいところ…
今やらなくてもいいと思う人がいる一方で、意欲的な人は、他の日常の活動と比べてリスクが変わるとは思えず中止は行き過ぎ、と考えるかもしれません。ほとんど欠席という可能性も考える必要があります。それなりに頑張っても結果が悪ければ苦情を言われ… 誰が担当しても難しい事態ではないかと…

2020年2月17日月曜日

黒羊石、はちまき石、一文字石

石鏃(坂城町文化財センター)
石鏃(坂城町文化財センター)

一文字石(『柳庵随筆』より)
一文字石(『柳庵随筆』より)

昨年11月の黒曜石の講演のビデオを見せて頂きました。

「腰越ふしぎ発見探検隊」が発足
https://shinshu.fm/MHz/22.56/archives/0000591580.html

シーボルト鉱物標本
http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DKoubutu/FSiebold/recordlist.php?-skip=500&-max=100
Obsidian は17件
329122 (和田峠産に類似)
329128 黒石脂《コクセキシ》信濃 和田峠《シナノ ワダトウゲ》ホシクソ
328718 信濃《シナノ》 ホシクソ (※ラベルの混入?)


黒曜石、黒耀石等の言葉の使い分けのお話がありましたが、追加すると、より正式な岩石名は「黒曜岩」。
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200906060078871112


明治5年の県宝の行政文書は「明治五年 勧業博覧会之部 全 農商」「信濃国産物大略」でしょうか。当時の筑摩県の文書がありました。
『信濃飛騨物産目録』鉱石化石土砂之部 明治5年8月(壬申八月)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2536386


会津藩の古文書は田村三省(1734-1806)『会津石譜』。

黒羊石 方言星糞 或漆石 形状究ラス 其色黒潤ニシテ醫珀ナリ 出所定ラス 予ノ具スルハ烏古瓦有シ圃中ヨリ得タリ


白羊石・黒羊石は『本草綱目』にもある名前です。(Obsidian かわかりませんが)
『本草綱目』第十巻 白羊石
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1287089/25

「黒曜石」の字は『雲根志』や『佐渡志』にありました。
『雲根志 三編』(享和1 1801) 巻之六 胡椒石
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2556678/16
『佐渡志』物産 黒曜石
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/764617/7

「星糞」の名前は『諸国里人談』等にあります。
菊岡米山『諸國里人談 卷之二』(寛保3 1743)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2557402/14
○星糞《ほしくそ》
信濃國岩村田の邊に星糞《ほしくそ》といふ石あり 春 田《た》耕《うへ》す(※たがやす?)ころ土中より掘出す也 色うす鼡にして性《しやう》は水晶石《すいしやうせき》に似たり 大きなるは稀《まれ》也 燧石《ひうちいし》の欠《かけ》たる程の石角たちたる也 此地は他所より流星《りうせい》多き所也 すぐれて流星あるとしは此石もまたおほし これを星糞《ほしくそ》といふ


星と関連して、星糞(黒曜石)を家に持ち込むと火事になる、という言い伝えもあるそうです。(小山真夫)

関連の以前の記事です。
https://kengaku2.blogspot.com/2019/06/blog-post.html



余談ですが、鉢巻石を幸運とする所があるそうで、調べてみましたが、それぞれの話の出所についてはわかりませんでした。もしかして、一文字石(いちもんじせき・いちもんじいし)と同一視されたのでしょうか。(『柳庵随筆』の一文字石の図では、筋は輪になっていません。)
鉢巻石は、病鉢巻(やまいはちまき)の連想等で、縁起が悪いという話が多くあります。筋を刀痕に見立て、「首切石」「恨み石」(手取川)とも。
一文字石は特に不吉というわけではないようで、明治天皇北陸巡幸の富山の記録にもあるそうです。
縁起が良いと言われたのは(輪になっていない)「一文字石」の方で、「はちまき石」は混同された?(昭和中頃?)

柳田国男『日本の伝説』 (親しばり石)
https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/53810_50599.html
やたらに外から小石を持って来ることを嫌っている家は今でも方々にあります。川原から赤い石を持って来ると火にたたるといったり、白い筋のはいった小石を親しばり石といって、それを家に入れると親が病気になるなどといったのも、つまり子供などのそれを大切にすることも出来ない者が、祀ったり拝んだりする人の真似をすることを戒める為にそういったものかと思います。

柳田国男『禁忌習俗語彙』(昭和13 1938)  (親縛り石 鉢巻石 親巻石 首切石)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1228428/28
オヤシバリイシ 親縛り石、白い線の通つて居る石。是を海邊などから家に持込むことを忌む(下總海上)。
ハチマキイシ 越後長岡附近で、石の周圍に白や黑の筋が一周して居るのを鉢卷石といひ是を家に置くと病人が絕えぬといふ(民俗學二卷五號)。信州でもこの名の石を嫌ふ處が多い。色は白とは限らず、筋の細く通つた川原石をさう謂ひ、之を持つて歸ると親の死目に會はぬとか又は母親が頭痛を病むとかいふ(下高井)。或は之を親卷石とも呼び、親を卷殺すとさへ謂つて居る。此石を屋根石に葺くと子供が夜啼をするともいひ(東筑摩)、又は火に祟るともいふ(下伊那)。結果の害は後に言ひ出したことでも、此種の石を忌む慣習は久しかつたのである。
クビキリイシ 伊勢の三重郡では、縞の入つた石を首切石といふのは、形から思ひ付いた名のやうに思はれるが、之を拾ふと首を切られるといふ。知らずに拾つたらそつと首を三度撫でゝから捨てよともいふ(鄕土石號)。

栗原信充(1794-1870)『柳菴随筆』(柳庵随筆) 一文字石
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2554064/6
一文字石 駿河國  郡三穗松原の中に一文字石とて石面に自然一文字の斑を生せし小石芣(※さかんに?)産する處あり 其書躰をのすから篆真草八分の體を備えたり 造化の不思議いふへからす しかるに信濃の岐蘇山にも同し石の産する處あり 全く三穗の産と同

『遊覧の清水』(昭和10 1935)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1034136/53
三保濱の一文字石
 三保海岸の砂礫の中に、一文字石と稱する石あり、黑き、又は靑き石の中央に眞白の一文字を現したる奇石、傳ふる處に依るとこの文字、自ら人體を備へてゐると云ふ。今も時折、心して尋れば見受ける事がある。この石を拾へるもの この石を所有せるものは、幸福を得ると云ひ傳ふ。
 今の世に云はゞラツキー・ストーンとも云ふ可きや。心あらば、君がマスコツトにとおすゝめする。
※三保松原の砂や石は持ち帰り禁止とのこと。※
三保松原 お知らせ
https://miho-no-matsubara.jp/archives/2853
 ※海岸の砂や石のお持ち帰りはできません。


ネットを検索すると、ハチマキ石の風習・俗信にもいろいろあるようでした。
・はちまき石を見つけると願いごとが叶う。(場所によっては普通に見つかる石なのでこの俗信は少数かも)
・(種類に限定なく)石に願い事を書いて羽車神社に納めると願いが叶う。
・はちまき石に願い事を書いて羽車神社に納めると願いが叶う。
・はちまき石を持ち帰り、願いが叶ったら羽車神社にお礼をして返す。
・はちまき石を持ち帰りお守りにする。
※三保松原の砂や石は持ち帰り禁止とのこと。※
三保松原 お知らせ
https://miho-no-matsubara.jp/archives/2853
 ※海岸の砂や石のお持ち帰りはできません。

願いが叶ったら(何倍かにして)お返しする、というのは子産石、イボ石等の儀礼と同様です。

ハチマキ石(不吉)と一文字石(吉)の区別が曖昧になり(元々曖昧だったのかもしれませんが)、病鉢巻も忘れられて、古い風習が衰退する中で、どちらも幸運とされるようになってきたのかも。
不吉とする記述も依然残っているので、今後どのように変化して行くか興味深いです。

伝承には近現代の捏造・脚色が普通に含まれています…
両参りと片参り(北向観音 善光寺)
https://kengaku2.blogspot.com/2022/03/blog-post.html
看板いろいろ、信州上田・塩田平の日本遺産ストーリー
https://kengaku2.blogspot.com/2021/07/blog-post.html
別所神社、縁結びの謎
https://kengaku2.blogspot.com/2021/02/blog-post_5.html
日本遺産ストーリー、子供銀行券、ハーメルンの笛吹き男 (日本遺産スペシャル)
https://kengaku2.blogspot.com/2020/12/blog-post_31.html
新しい鞍が淵伝説
https://kengaku2.blogspot.com/2020/10/blog-post_27.html
舌喰池の伝説
https://kengaku2.blogspot.com/2019/09/blog-post_29.html
伝承の保護者と破壊者
https://kengaku5.hatenablog.com/entry/34754513