2020年1月26日日曜日

下塩尻の凝灰岩の化石

凝灰岩の魚化石
凝灰岩の魚化石(信濃中部地質誌 114頁より)

写真は、本間不二男『信濃中部地質誌』(昭和6 1931) 第五十二図 魚の化石(身長約十八糎)(内村層上部凝灰岩)(小県郡塩尻村下塩尻採石場) です。
以下の記事にもありました。
本間不二男「信濃中部第三紀層の分類(二)」(昭和3 1928)
http://hdl.handle.net/2433/183437

母岩は凝灰岩(御坂凝灰岩)としているので、少なくとも別所層の黒色や茶色灰色の泥岩とは異なる石なのでしょう。「魚類の化石であるが鑑定に堪えるものではない」(第二篇 114頁)と書かれていますが、姿はハダカイワシに似ているかも。トンガリハダカ属 Nannobrachium とか。
この標本は今もどこかで保管されているのかもしれませんが、見つけられませんでした。本に掲載されるような標本でも、気にかけられることがほとんどないのはちょっと残念…


上田市立博物館の地学標本の常設展示が別館に移転したそうです。広くなって鉱物も増えたとのこと。今後も展示の目的に必要な内容を増やして行って頂ければありがたいです。
(「希少」「美しい」等の言葉だけ聞くと、コレクターやハンターを育てるのが目的?と思ってしまいます… 希少性は、価値があると同時に、楽しみを台無しにする要因にもなります。)

上田市立博物館に「上田地域の岩石・鉱物・化石」を展示した「常設展示室」を設置!
https://shinshu.fm/MHz/22.56/archives/0000594915.html

上田市立博物館 収蔵品紹介 自然
https://museum.umic.jp/hakubutsukan/collection

宮下コレクションは鉱石標本1305点、岩石267点、化石73点で、1645点すべてが鉱物標本というのは誤解。これまで展示されてきた化石もあります。(魚化石やメタセコイア等)

ヘミオナス馬 Equus hemionus を「ヘミオナス」に短縮することはあるのでしょうか?(例えば ナウマンゾウ Palaeoloxodon naumanni や ナウマンヤマモモ Comptonia naumanni を「ナウマン」「ナウマニイ」と呼ぶことは無いかと)

「ソコダラ科魚類の化石」は昭和33年に採集、昭和61年にソコダラ科と鑑定され「完全な形(全身の意味か?)で見つかったソコダラ科化石としては日本で初めて」と言われました。ソコダラ科化石は希産ではなく、鱗の化石はそれ以前から研究されていました。具体的な種類は未解明かもしれません。魚化石の研究者は少ないようで、多産するニシン科やハダカイワシ科でも、詳しい種類の話はわずかです。
2016年に国立科学博物館所蔵の坂城町産の魚化石が初めてニシン属として同定されたという話がありました。もしかしてニシンの化石はまだこれ1つだけでしょうか?

日本古生物学会 第165回例会予稿集(2016) 43頁
籔本美孝「長野県埴科郡坂城町産中新世ニシン科魚類について」
http://www.palaeo-soc-japan.jp/meetings.html

日本古生物学会 化石 vol. 105 (2019.3.31)
特集:魚類化石研究の現状と可能性(1)
籔本美孝「日本の中生代・新生代硬骨魚類化石――日本の博物館所蔵の主な魚類化石と研究の可能性について」
http://www.palaeo-soc-japan.jp/publications/fossil/vol-105/

Eosardinella hishinaiensis は無く、もしかして否定的?

魚類学雑誌 13巻4-6号(1966)
Jiro SATO「A New Genus and Species of Sardine from the Miocene Hishinai Formation, Northeastern Japan」
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jji/13/4-6/_contents/-char/ja
https://doi.org/10.11369/jji1950.13.112

10cmほどの稚魚の場合は成魚より頭部の比率が大きくなり、また、化石は押し潰されて生体より大きく見えることもあるかも。
岩手県宮古湾に生息するニシンの生態を探る
https://www.spf.org/opri/newsletter/248_1.html

2020年1月20日月曜日

頁岩の石膏

頁岩の石膏
頁岩の石膏

写真は黒色頁岩の層理面にできている透石膏です。1~2ミリほど。たぶん露頭表面の隙間に水が入ってできたもの。薄く細長く放射状に成長していたり、それらが繋がって、たたみいわし状の「たたみ石膏」になっていたり。古いものではないはずで、実験室でも再現できるのかも。他には、地層や岩塊の境界付近にできているものや、ノジュール内の空洞にできているものを見かけます。

先日、プルピ晶洞の録画ビデオを見せていただきました。メキシコ ナイカ鉱山のセレナイトクリスタル洞窟に次ぐ、欧州では最大規模とのこと。

世界ふしぎ発見! 第1538回 初潜入!クリスタル洞窟 世界を変えたスペインの宝
https://www.tbs.co.jp/f-hakken/onair/200111.html
ヨーロッパ最大の「結晶世界」、「プルピ晶洞」一般公開される
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13248.php
ギブス・トムソン効果
https://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/~miurah/gibbs_thomson.html
オストワルド熟成
https://www.nsc.nagoya-cu.ac.jp/~miurah/ostwald_ripening.html
泥岩の石膏
https://kengaku5.hatenablog.com/entry/35864509

ラス・メドゥラスの番組も見せて頂きました。山に穴を掘り、水を流して崩すことによってできた人工の地形。
そう言えば、上田市の鴻の巣(天然記念物)も似ていると聞いたことがありますが、黄色っぽい礫岩層なのは同様ですが、大きさが異なり、鴻の巣の特徴である垂直方向の比較的細かい侵食もあまり見られず、やはり別物という感じがしました。(鴻の巣は湖水時代の崖の跡?)

ラス・メドゥラス ローマ帝国の金山!山を崩した700キロの水路
https://www.tbs.co.jp/heritage/archive/20200105/

鴻の巣
https://museum.umic.jp/map/document/dot84.html
(「槍のように先のとがったけわしい地形のところは、礫岩にしみこんだ鉄分の固い部分が雨や風に耐えている様子をあらわしています」とありますが、少し白っぽい部分もあって、すべて鉄分によるものか疑問…)

2020年1月9日木曜日

シロウリガイ

上田創造館の貝化石とシロウリガイのCT画像(東京大学大気海洋研究所サイトより)
上田創造館の貝化石とシロウリガイのCT画像

イズモユキノアシタガイ(信州新町化石博物館)
イズモユキノアシタガイ(信州新町化石博物館)

1枚目の写真は上田創造館にある貝化石と、東京大学大気海洋研究所のウェブサイトにあるシロウリガイのCT画像です。2枚目の写真は以前も掲載した信州新町化石博物館のイズモユキノアシタガイです。
上田創造館の貝化石はやはりシロウリガイにとても似ていて、殻頂等の形がイズモユキノアシタガイとは異なっているように見えます。どの特徴からの判定なのでしょう?

化石もCTで観察できたら面白そうです… ほとんど現生と違いはないのかもしれませんが。

もしも礫層なら、化石の年代はより古い時代である可能性も。

3D-CT深海生物 東京大学大気海洋研究所
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/project/3D/
沖ノ山堆のシロウリガイ Calyptogena soyoae
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/project/3D/ct_scan/data45_shirourigai.html

二枚貝化石のみかた
https://www.akita-c.ed.jp/e-furusato/shell/mikata.html

信州新町化石博物館
http://www.ngn.janis.or.jp/~shinmachi-museum/fossil_mus/fos-mus.html

以前の関連の記事です。
https://kengaku5.hatenablog.com/entry/36216884
https://kengaku5.hatenablog.com/entry/34988277

青木層でウチムラマユイガイダマシ、キヌタレガイ等の報告もあります。Cultellus sp. かもしれない破片の中にも、もしかしたらシロウリガイがあるかも。

上田市東南の第三紀青木層に見出された貝化石と黄鉄鉱について(1985)
https://soar-ir.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=13705&item_no=1&page_id=13&block_id=45

2020年1月3日金曜日

化石おみくじ

化石おみくじ
化石おみくじ

魚のウロコ化石
魚のウロコ化石

以前、神社へ行く途中の泥岩の露頭で、小さな岩片を3個拾って中に化石がいくつあるかで運勢を占うというのをやったことがあります。3個以上なら大吉、2個なら吉、1個なら小吉、0個は凶。
今年は雪も無く乾いていたので、久しぶりにやってみました。
もっとも、大小や欠損の有無を問わなければ、場所の選び方次第でたいてい大吉になるので、運不運というより、結局、おもしろい化石が見つかるのが一番嬉しかったりします。(愛好家にとっては、採集行為自体に狩猟性・ギャンブル性があって、毎度運試ししているようなものかもしれません…)